一週間の始まり、お母さんは心配性。

今朝、Jr.が出掛けた後に忘れ物に気付いた。
ブレザーの下に着るべき紺のセーター。

以前、忘れて、寒かったーと帰ってきて風邪を
引いたことがある。

今なら間に合う。追おう。

まだ、部屋着。ノーメーク。前髪クリップ。
ノーブラ。
でも、迷ってる暇はない。
ジャンパーを羽織って、マスクをつければ、誤魔化せるだろう。
車で行けば、尚更、わかりはしない。

マイカーを走らせ、30メートルほど前方に
姿を捉えた。踏み切り待ちだ。チャンス！
しかし、その踏み切り待ちの車の長い列に阻まれ
近づけない。おまけに、Jr.は右側にいる。

横をみると、丁度、車を停められるスペース
があり、覚悟を決めた。

降りて、走って追った。
手前にJr.の友達が歩いてる。
この子に渡して、頼んじゃおうか。
イヤ、こんな荷物いっぱいじゃ、可哀想だ。

おはよ！うちのが忘れ物しちゃってさーと言いながら抜きさる。
お、おはようございます と驚く友達。

セーターを高く掲げ、振り回して、名前を叫ぶ。

振り返るJr.。びっくり顔。そして半笑い。

着てるよ、ホラと袖口からチャコールグレーの
セーターを出して見せた。
こっちのがあったかいよって、前、くれたでしょ？
今日、それにした。じゃね！

踏み切りが開き、立ち去るJr.。
追いつく友。
何も成し遂げられず、戻るワタシ。

走っているとき、はしれメロスを
思い出した。
困難を乗り越え、あられもない格好で走る。

踏み切りが開く運命の時に間に合った。
紺色のマントを差し出した。

しかし、私は勇者にはなれなかった。
ただの、慌てんぼうのパタパタママ。

昔、読んだ漫画でお父さんは心配性というのもあったな。メロスよりは、そちらのが、おあつらえ向きか。

そんな、一週間の始まりの朝だった。